〜 商工会改革を提案し新時代の商工会を開く 〜

商工会改造プロジェクトは、長野県宮田村商工会に勤務していた元経営指導員 湯沢健二が これからの商工会のあるべき姿について意見発表を行い、全国の心有る同士諸君と議論する超前向きなページです
事業改造論
スクラップアンドビルド
新年祝賀会
新年祝賀会
伝統的な事業は、同じやり方で長く続けていくべきものもありますが、それ以外の事業については効果の上がる時期は限られています。ですから毎年事業効果を測定して、見直す必要があります。
  しかし、事業のスクラップアンドビルドほど難しいことはありません。効果の薄くなった事業、役割を終えた事業は思い切って廃止して新しい事業に切り替えるべきなのですが、これがなかなか・・・。
今現在、事業に携わっている役員の皆さんには事業への思い入れもあって見直しは難しいことなのです。「そうはいっても、こういう効果もあるじゃないか」という意見が出て、これまでどおりという結論になることが多いんです。効果が薄くなったとはいっても、何の意味もない事業なんてないですからね。
  そこで、宮田村商工会では、前期で退任された理事の皆さんを中心に「事業改革委員会」を組織して提言をいただくなどして、改革を進めてきました。

地域財貨循環促進事業について
ワイン祭にてスタッフの私
ワイン祭にてスタッフの私
 以前は、一度使われた財貨がコミュニティの中で循環し、100円の価値が300円にも500円にもなって経済効果をあげたものです。分かりやすくいうと、お客様が魚屋で買い物をすると、魚屋のおかみさんは、その売上をもって八百屋で買い物をし、八百屋の親父さんはその売上を握って近くの飲み屋へ飲みにいく、という具合です。このように一つの財貨がコミュニティの中で循環し、その価値が何倍にもなり皆が潤ったのです。
ところが、現在はこの循環の輪が断ち切られ、あっという間に財貨は逃げていってしまうのです。大型店やコンビニは、その売上をその日か翌日には、東京、大阪、名古屋などの都会へ送り、その財貨は二度と地方へ帰ってくることはありません。都会と地方の経済の対立構造の中で、地方経済は都会を潤すために存在しているのかと思われるほどです。
 この、財貨が瞬時に散逸してしまう状況を改善する。理想的なことをいえば、都会を含む他地域から財貨を獲得し、当地域の中でできる限り循環させ、外へ逃がさない仕組みを作ることが「地域財貨循環促進事業」です。これが実現すれば、日本全体の経済が落ち込んでいるときでも、宮田村は好況に沸くということもありうるのだと考えています。
 具体的な事業でいうと、「他地域から財貨を獲得する」ということでは、両隣の伊那市、駒ヶ根市の皆さんが多く利用している宮田ビジネス学院と旅行紹介事業、全国から受講生を集める通信教育、特産品頒布会「みやだ味の歳時記」「四季の里構想」事業などがあります。また、地域の中で循環させ外に出さない仕組みとしては、プレミアム付商品券、お買い物ラリー、住宅改良支援事業の諸事業がこれにあたります。

スーパー商品券梅が里と住宅改良支援事業
 5%のプレミアムをつけた商品券を、販売数量を決めずに通年発行しています。その目的は、村の中で財貨を回す財貨循環の考え方に基づいており、宮田村の商業が地域間競争に勝ち抜くこと、大型店対策としての側面もあります。
  500円額面と1000円額面の2種類とし、それぞれ5%引の475円と950円で販売します。販売所は、宮田村商工会と商工会が管理する宮田産業振興センター(喫茶プラム)の2箇所で、いつでも、1枚から購入できます。
  費用は、商品券を受入れた商店が2%負担(商工会での換金時に差し引く)し、商工会が3%と印刷・管理経費を負担します。この事業には行政の補助は入っておらず、商工会は学院などの収益をあて全額自前の予算で対応します。
  また、村経済へのカンフル剤として時期を決めた20%プレミアム付商品券も発売しています。使える期間を2ヶ月弱とし、しかも10月11月の売れない期間に実施することにしました。そのかわりプレミアムを20%に増やしました。ほかでは真似のできない20%ものプレミアムが付けられるのは、新たな収益事業で事業費を稼ぎ出した成果ですとPRし、その理解を得ることにも役立っています。普段手厳しいことばかり言う、ある会員さんも「湯沢君がやっているパソコン教室のおかげで、いい事業をやってもらえる」と絶賛でした。
 次に、住宅改良支援事業です。
 

外国人研修生受入事業
外国人研修生の日本語教室風景
外国人研修生の日本語教室風景
 この事業は、商工会が窓口となって中国大連から研修生を受け入れ、国際交流と企業の労働力確保を目的としているものです。日本にいる期間は3年間。1年目は研修生として勉強し、2年目、3年目は企業で実習を行います。現在、研修生は8事業所33名、実習生は7事業所23名の計56名です。まだまだ受入人数は増えそうで、近いうちに100名を超えることでしょう。
  研修生は日本語や生活習慣、交通安全などさまざまな内容を学習されます。商工会館に日本語を先生について唱和する声が響いています。全国初という事業が当商工会には多いですが、この事業も全国で2番目だったかと思います。
  ところで、この商工会改造プロジェクトで紹介している事業等は私が企画し進めているものを紹介していますが、この事業だけは前商工会長の発案であり、業務は事務局長が一人でこなしておられます。そこで質問や資料請求は事務局長にお願いします。

村おこし事業
 宮田村商工会は地域振興事業にも積極的に取り組んでいます。地域振興というと、祭りやイベントなどの、単発の打ち上げ花火のような事業と思われる方もいますが、そうではありません。イベントなどもたくさん実施していますが、もっと長期的な、地域全体に力をつける事業にも力を入れています。
  平成11年度から取り組んできた村おこし事業について紹介しましょう。私は通常の方法では発展性がないと考え、事業内容も進め方も従来とは違う新しい考え方で行ってきました。
 初年度の平成11年は「キーワード策定事業」と位置づけました。通常は「ビジョンづくり」として管内の資源を掘り起こし将来のビジョンづくりをするところです。しかしそれは総花的なものになることが多く、これでは実際何をしたらよいのかわからず、なかなか行動に結びつきません。立派な冊子を作ってもそのときだけ。いずれは放られてどこかへいってしまいます。
 そこで、資源の掘り起こしは従来どおり行うけれども、そこから絞り込んでいき一つのキーワードにまとめようと考えました。このキーワードのもとに力を結集したら村の力も大きくなると考えました。そのキーワードは「水」と「梅」に決まりました。
  平成12年度は特産品開発事業として行いましたが、具体的な商品を作るのでなく、即効性はないけれども、宮田の産品が売れるための仕掛け、背景作りをしようと考えました。
  そして、「水」については、村内のさまざまな水資源を調査した中から隠れた名水である伊勢滝付近に湧き出る水を「伊勢滝の水」として掘り起こすこととしました。梅については、キーワードとして「梅」を選んだ理由。宮田村が「梅が里」と呼ばれることのルーツを探りました。宮田村は梅の産地でもなく梅の公園も並木道もありません。調査の結果、奈良時代末期に歴史上の実在の人物、「おさべ親王」が村におられ、「梅の局」と呼ばれる方とともに、梅にまつわる歌を詠まれたといい、その歌が残っていることがわかりました。そこで、梅で作った商品ではなく、この物語を村の特産品としようと考えました。物語を売るのではなく、それを背景に村の産品を売り出す仕掛けを作るのです。伝承を形のあるものにするために、絵本を制作しました。
  その後、「おさべ親王祭」「紙芝居の制作・上演」「小学生による劇の上演」「伊勢滝の水巡りウォーキング」などさまざまな事業に広がりをみせています。
  最近は「ストーリーサイン」というものを制作し村内24箇所に設置しました。村おこし事業の成果である「おさべ親王物語」にちなんだ各シーンの絵を入れた看板を村内の事業所や公共施設に取り付け、「おさべ親王の村」のイメージを訴求するとともにウォークラリーなどにも活用しようというものです。
  すべての絵柄を変え個々には説明を付けないことで、古代に思いをはせ、想像しながら村を巡ってもらおう。また、これによって人の流れを生み出しビジネスチャンスに結び付けていこうというねらいです。